「試験勉強は基礎が8割なら、残りの2割は何?」
えーと、基礎が8割というのは半ば誇張表現であって…という本音はさておき、強いて挙げるとすれば「模試」だと思います。
模試というと、大学入試の合格判定や偏差値に一喜一憂した記憶がある人も多いでしょう。
もちろん模試の結果で合格までの進捗状況を把握するというのは、模試の重要な役割のひとつです。
しかし、模試には実力判定以上に重要な役割があります。
それは、試験本番で必要な実戦力を養うこと。
すなわち模試は「基礎」の後に続く「応用」フェーズで中核を担う存在になります。
そこで今回は、試験における模試の重要性について考察していきます。
1. 初見の問題で基礎を応用する力を磨く
- 初見問題で基礎を応用する力が育つ。
- 試験に強くなる技術は初見でこそ身につく。
- 模試は貴重な初見問題の供給源になる。
試験勉強の基礎は、過去問や問題集の周回によって築かれます。
繰り返し解くことで、合格するために必要な論点が定着し、積み上がっていく。これは学びの王道です。
しかし、基礎の周回を続けていると、問題文そのものを記憶してしまい、深く考えずとも反射的に正解できるようになってきます。
それはそれで「力がついた証」とは言えますが、それとは別に、初見の問題に対して基礎を応用して考える練習というのは、どうしても必要です。
そうした練習の中で身についた力こそが、合格につながる実戦的な応用力になるからです。
また、はっきりと正誤の判断ができない選択肢との向き合い方や、基礎的論点の組み合わせ問題へのアプローチ、ケアレスミスの減らし方など…
こうした「試験に強くなるための技術」は、初見の問題でなければ身につきにくいものです。
模試というのは、そうした初見の問題を数多く体験できる貴重な演習の場なのです。
大学入試のように市場規模の大きな試験であれば、応用問題集も豊富に流通していますから、初見の問題はいくらでも入手できるでしょう。
しかし、過去問くらいしか流通していない市場規模の小さな試験では、初見問題の入手そのものが難しいという実状があります。
そうした市場規模の弱点を補うためにも、初見の問題をたくさん入手できる模試というのは、シンプルに学習素材としての価値があるのです。

市場規模!
これは資格試験ならではの視点ですね。
2. 試験時間の感覚を体得する
- 試験は「時間内に解ききる力」が求められる。
- 問題ごとの時間配分と集中力が鍵になる。
- 模試は時間感覚を体得するための演習になる。
試験には必ず制限時間があります。
例えば、私が合格した行政書士試験の試験時間は3時間でした。
この3時間という時間は、短くて長い。
まずは単純に全設問(60問)を解答しきる時間が足りない可能性があります。
近年の行政書士試験は問題の長文化が顕著ですから、最低でも試験時間内にすべての問題を完走するために、1問に費やすことのできる時間感覚を磨いておく必要があるでしょう。
また、問題文を読んで勉強していない論点だと感じたら、その問題はばっさりと捨てて、他の解けそうな問題に持ち時間を費やす時間管理の意識も重要です。
一方で、長くて複雑な問題をようやく解き終えた後、頭の中をリセットして次の問題に取り組む力や、それを延々と60問も繰り返すための集中力も必要です。
途中でトイレに行きたくなることもあるでしょう。
こうなると3時間は非常に長い戦いです。
こうした時間感覚は、普段の勉強ではなかなか意識しないものです。
しかし、試験というのは「与えられた時間で」合格点をとることが求められているのですから、そもそも試験と時間は切り離して考えてはいけない関係であるはずです。
「時間がなくて最後まで解けなかった」というのは、受験生としてあってはならない台詞なのです。
模試はそうした時間感覚を「学ぶ」ことができる貴重な機会。
これを逃す手はありません。

試験は制限時間との戦い。
解くスピードも学力のうちですね。
3. 得点戦略と合格ラインの見極め
- 試験は満点ではなく合格点を目指すもの。
- 得点戦略は模試でこそ磨かれる。
- 間違えても合格できる「間合い感覚」が重要。
多くの試験には、合格点が設定されています。
決して満点を取る必要はなく、むしろ試験問題の中には、得点することを期待されていない問題や、深入りしてはいけない「捨て問」さえ含まれていることがあります。
つまり、試験の目標とは「すべてを正解する」ことではなく、「合格に必要な得点を確保する」ことなのです。
こうした「合格のために必要な得点を確保する」という得点感覚は、模試を通じて磨かれていきます。
見たことのない論点や、考えてもわからない問題、あるいは正誤を一つに絞り切れない問題などは、運否天賦に任せて次の問題に切り替えた方が、全体としては好成績につながるかもしれません。
例えば、5肢選択問題で3肢は簡単に消去できるのに、残りの2肢が絞り切れないとき。
その場で悩み続けるより、50%の確率に賭けて先に進む方が、時間と得点のバランスを保てることもあります。
さらに、もしその問題が苦手科目だったとしたら。
「ここまで得意科目で貯金があるはずだから、ここは持ち時間を使うより50%で落としても大丈夫」と判断するのか、
それとも「ここでさらに貯金を重ねておきたい」と考えて、じっくり正解にこだわるのか。
本試験では、こうした状況判断が常に求められることになります。
こうした「どの程度まで間違えても合格できるか」という間合いを見切る力は、普段の勉強ではなかなか培えません。
模試なら、間合いを間違えてもノーダメージ。
しかし本試験でその判断を誤れば、再挑戦は次の本試験まで待たなければなりません。
もっと模試で練習しておけばよかったと、後悔しても遅いのです。

模擬戦だから「模試」。
当たり前だけど大切な視点ですね。
まとめ:模試は「応用」フェーズの中核になる
ここまで考察してきたように、模試というのは、基礎を応用し、合格へと結びつける実戦演習の場です。
試験に合格するためには、基礎の習得だけでなく、実戦で勝つための技術も欠かせません。
裏を返せば。
基礎が完成しているからこそ、模試はその真価を発揮します。
模試を通じて得点戦略を磨き、合格ラインの間合いを見切る力を養うためには、土台となる知識がしっかりと築かれている必要があります。
模試が本格的に始まるまでに「基礎」を終えておくこと。
これが全体的な勉強計画の目安になるはずです。
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