記憶のメカニズム:忘れた頃の復習が勉強の効果を爆上げする

脳の模型を不思議そうに見る灯さんのイラスト 記憶術
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灯

暗記が苦手です。
どうすれば上手に憶えることができますか?

勉強したことがなかなか憶えられないというのは、おそらくすべての受験生に共通した悩みです。
そういう私も暗記は大の苦手です。

しかし、試験勉強とは結局のところ記憶力の勝負です。
多くの試験がペーパーテストである以上、インプットした知識を正確にアウトプットするという構造からは逃げられないからです。

だからこそ、脳の「記憶のメカニズム」を知り、その仕組みに合った勉強をすることが、最も効率のよい学び方になるはずです。

そこで今回から、記憶のしくみを考察していきます。
暗記に苦手意識がなくなれば、勉強は今よりずっと楽しいものになるはずです。

01 忘れるのは脳の検索する力が弱くなるから

灯

憶えてもすぐに忘れてしまうんです…

私たちが何かを勉強したとき、その情報は言うまでもなく脳の中に保存されます。
そして後日、その情報が必要になったとき、私たちは脳内に保存された膨大な情報から、瞬時に必要な情報を検索して利用します。
その情報がしっかり取り出せれば「憶えている」ということになりますし、取り出せなければ「忘れた」ということになります。

ところで、私たちが「忘れた」というとき、保存された情報が脳から消えてなくなってしまったと思いがちです。
しかし、実際にはそうではないようです。

この点に関して、斎藤直子『世界一の記憶術』に、マインドマップの考案者トニー・ブザンの興味深いインタビューが書かれています。

ある日、試験がありました。教室で自分が知っているはずの答えを考えに考えましたが、思い出すことができませんでした。
あきらめて部屋を出たあとになって、正解を突然思い出したんです。なんて馬鹿げてるんだと思いましたよ。情報は脳の中にあったのに、取り出せなかったんですから。
それで自分の勉強方法やノートを見直して、考えついたのがマインドマップです。
(斎藤直子『世界一の記憶術』)

つまり、私たちが「忘れる」のは、保存された情報が失われるのではなく、検索する力が弱くなるからです。

本当は脳の中に必要な情報がちゃんと保存されているのに、膨大な情報の中に埋もれてしまって取り出すことができない。
これが私たちが「忘れる」ことの正体です。
要するに「憶える」とか「忘れる」といった記憶の問題は、インプット側ではなくアウトプット側の問題なのです。

Akari NOTE|この章でわかること
  • 忘れるのは脳の「検索する力」が弱くなるから。
  • 情報は脳に残っていても、取り出せないことがある。
  • 記憶の本質はアウトプットの問題である。

02 「望ましい困難」によって検索する力は強くなる

灯

脳の「検索する力」を鍛えるには
どうしたらいいんですか?

さて、記憶力とは脳の検索する力の問題だとすれば、脳が検索する力はどうすれば強化できるのでしょうか。

様々な心理実験で明らかになったのは、脳に保存された情報は、使えば使うほど思い出しやすくなるということです。
さらに特筆すべきは、検索する力が弱まって思い出しにくくなった情報を思い出すと、その情報を検索する力はより強化されるという点です。
つまり、記憶を強化するためには、一度忘れることが有効だというのです!

検索する力が弱まって、思い出すことが困難になるほど、思い出したときにより強い記憶に変わる。
これは「望ましい困難(Desirable difficulties)」と呼ばれています。

記憶を使えば記憶は変わる。それは、良いほうに変わる。忘れることで、覚えたことがより深く定着する。それは、余計な情報をふるいにかけるとともに、覚えたことを一時的に断絶することで可能になる。断絶した記憶をその後再び引き出すと、検索の力と保存の力が以前よりも高まるのだ。こうした働きは、脳生物学と認知科学によって明らかにされた、記憶の基本的な原理である。
(ベネディクト・キャリー『脳が認める勉強法』)

記憶を強くするというのは、脳の中に保存されているはずの情報を再び思い出すことで、弱くなった検索する力を回復させるということです。
そして、筋肉がそうであるように、検索する力も回復するときに以前より強化されるのです。

そう考えると、忘れることは勉強の敵ではなく、むしろ勉強に欠かすことのできない要件です。

勉強したことを忘れても、悲観する必要はありません。
忘れることは学びの一部なのですから。

忘れることと思い出すことを繰り返すことが、記憶の基本原理なのです。

Akari NOTE|この章でわかること
  • 思い出すほど、記憶は強くなる。
  • 忘れることが記憶強化につながる。
  • 記憶は「検索力」を鍛えることで深まる。

03 復習なくして記憶が強化されることはない

灯

だから「復習」が大切なんですね!

勉強には復習が大切だと言われます。
記憶の基本原理を知った今、それは当たり前のことでしょう。

脳に保存した情報が朧気になり、ぼんやりとした情報を思い出すことで記憶は強化されるのですから、復習なくして記憶が強化されることはありません。

ここで敢えて「反復」と書かなかったのは、忘れることなく反復練習しても、記憶の強化にはつながらないからです。
誰しも一度は経験があると思いますが、同じ単語や漢字を10回連続で書いても、実のところ記憶にはあまり効果がありません。

むしろ間隔をあけて、忘れかけた頃に復習テストで思い出すのが効果的な記憶法です。
そして、思い出せなかった単語は再びインプットする。
記憶にとっての「反復」とは、こういう意味です。
「ある程度の間隔をあけながら何度も繰り返す」という意味では、「反復」よりも「周回」をイメージした方がしっくりくるように思います。

なんだかんだキレイごとをいっても、試験に合格することを目指す以上、記憶力とは向き合わなければなりません。

「記憶は保存する力と検索する力からなる」
「検索する力は復習によって強化される」

こうした記憶の基本原理を知っておくことは、今後の勉強において大きな武器になるでしょう。

Akari NOTE|この章でわかること
  • 記憶は「復習」でこそ強化される。
  • 忘れかけた頃に思い出すのが効果的。
  • 周回するように繰り返すのが記憶法の基本。

灯さんノート:記憶のメカニズムまとめ

灯

ここまで読んでくださってありがとうございます。
暗記が苦手でも、記憶のしくみを知れば、勉強はもっと楽しくなるはずです。
最後に、ポイントをまとめておきます。
このノートを見返しながら、復習のタイミングや方法を整えていきましょう!

Akari NOTE|この記事でわかったこと
  • 記憶とは「保存」と「検索」の力からなる。忘れるのは、検索する力が弱まるから。
  • 思い出すのが難しいほど、記憶は深く定着する。忘れることは、記憶強化のチャンス。
  • 復習は「検索力の再訓練」。忘れかけた頃に思い出すことで、記憶は強くなる。
  • 反復よりも「周回」の発想で。間隔を空けて、何度も思い出す練習をしよう。

まとめ:復習こそ最強の記憶法

今回は、記憶のメカニズムについて考察してきました。

私たちが「忘れる」のは、保存された情報が失われるのではなく検索の力が弱まるからです。
そして、検索する力が弱まって、思い出すことが困難になるほど、思い出したときにより強い記憶に変わります。
つまり、忘れかけた頃に復習テストで思い出すのが効果的な記憶法。
勉強したのに復習をしないというのは、せっかくの成長のチャンスをみすみす逃しているのと同じなのです。

こうした記憶の基本原理をベースにした具体的な勉強法については、次回の記事で考察していきます。

灯
次は…どうしましょうか?

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